介護の現場での口腔ケアは、歯ブラシの動かし方などのテクニックより、相手への接し方の方が重要であることと言っても過言ではありません。
今回は、口腔ケアの際のポイントをお話しましょう。
1.嘆きを聞いてあげる
「お口の状態はいかがですか?」などと、その日の調子をたずねると「痛くて眠れなかった」「手も痛い」「歩くのがつらい」など、いつの間にか患者の胸のうちにたまっている嘆きがとりとめもなく出てくる、ということがあります。
こうした感情の吐露は心理過程の正常な作業です。介護を受けている方にはこうした形で、心情を吐露することも必要なことですから、可能な限り話を聞くようにしましょう。
2.傾聴する
患者様の訴えに対して、「こちらはしっかりと聞いていますよ」というシグナルを発することはとても大切です。これが信頼関係の構築にもつながるからです。
相手が「痛くて眠れなかった」といったら、「そうなんですか、痛くて眠れなかったんですね?」と相手の言葉をくり返しましょう。
これは同情や哀れみといったものではなく、共感をもって相手の話を傾聴するということです。相手の苦しみや気持ちを完全には理解できなくても、理解しようと努力していることが伝わるのです。
3.目線を合わせる
人間は誰でも上からの目線で見下されながら応対されるのは、気分の悪いものです。
ベッドに寝たきりだったり車イスに座ったままだったりする方に、立ったままで、上からの目線で話しかけるのは控えましょう。イスに座る、患者様のそばにしゃがむなどして、患者様と目線を合わせてから話しかけるようにします。
4.ペースは合わせて、トーンは明るく
各人の話し方のペースは、それがそれぞれに合っているからそのペースで話しているのです。
それより早いペースで相手に話されると、「せかされている」「相手がイライラしている」と思わせ、遅いペースなら「じれったい」と思われたりすることがあります。こうした思いを抱かせないよう、話すときのペースは相手に合わせることを意識します。
話すときは明るいトーンで、必要があれば、大げさになることがあってもよいでしょう。
ふさぎがちの患者様などに対しては口腔ケアが無事に終了したときなど、「わあ~、きれいになりましたね!」などと、少し大げさに喜んでみると、相手の気持ちを引き上げる効果が期待できます。
ただし、落ち着きがなく過剰に興奮気味な相手に対しては、こうした態度は逆効果になることもありますので、その時は抑えたトーンで話すよう心掛けましょう。